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10年。看護学校を卒業してからずっと。仕事のことばかり考えて生きてきた私は、仕事だけでなく、すべてを失ったような気がしてたんだ……。
とにかく、全部どうでもよくなって。
何もかも、色褪せて見えて。
ただ、ソコから離れたくて、今まで行ったことのない、誰も私を知らない土地に行ってみたいと思った。
そして。
たどり着いた先が、この川上村から見上げた満点の星空で。
気付けば、再就職先まで見つかってしまってたんだ。
「ちょっと、優香ちゃん! そろそろ時間っ。準備しなきゃ」
「あっ! わあっ! すみませんっ。急いで歯磨きしてきます!」
あ~もう。変なこと思い出しちゃったじゃない。
慌てて歯ブラシを咥えながらも、一度蘇ってきた記憶はさらに繋がっていく。
満点の星空を見て。
ただただ涙が止まらなくて。
宇宙の中に自分一人がぽつんと放り込まれたような……。
それでいて、大きな何かに包み込まれてるような温もりがあって……。
そんな感覚の中、夜が明けて、とりあえず泊まってた山荘から出て村の中を歩いてた。
それで。
その時、具合の悪いおばあちゃんがいて……。
「私、看護師なんです。近くの医療機関までご一緒しますよ」
そう言って、一緒にたどり着いた先が、この川上村診療所だったんだ。
確かに、私はこの村の大きな何かに導かれてここまで来れたのかもしれない。
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