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「じゃ行きましょうか」
「はいっ!」
今日は先生と主任と3人で訪問に出かける。
一度訪問に出てしまえば、流れる時間はすごく早くて、4件の訪問診療はあっと言う間だった。
4人ともそれぞれに通院が難しい事情のある方で、皆さん自力での移動は出来なくなった方ばかりだった。
それでも、皆さんの表情はすごく柔らかくて素敵なんだ。
自分自身の力では歩くことはもちろん起き上がることも座ってることも難しいような状態で。
それでも、私たちが訪問すると「ようこそ」「待っとったよ」と声をかけてくださる患者さんに、
診察の最中は毎回先生の手を払いのけ怒ってるくせに、診察が終わって介護されてるご主人様から
「大丈夫だって。良かったなあ」
そう声をかけてもらった瞬間
「おや、そうかい。ありがとうさん」
そう言って笑う認知症のおばあちゃん。
もう全く話せなくなった方でも、今まで病院で見てきた患者さんの表情とはまるで違うんだ。
多分、病院では『患者さん』になってしまう人達が、在宅では『一家の主』であり、『掛け替えのない家族』であり、『〇〇さん』ていう個人なんだ。
病院にいた時には感じられなかった日々の生活が、ケアが、ここにあって……。
なんていうか、すごく居心地が良くて落ち着く。
前の病院が特別悪い病院ってわけじゃなかったなかもしれない。
でも、私には患者さんとのこの距離感が心地好い。
そう思えば思うほど、あの時の出会いに感謝の念が消えない。
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