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「あっ。」
私はふと窓の外を見る。
それは私のちょっとした癖。
そして目線の先には、赤茶色の髪をした一人の男の人。
「あ、花がまた先輩のストーカーしてるー。」
声のする方を振り向くと、親友の菜々ちゃんがニヤニヤした顔つきで私を見てた。
「菜々ちゃん。」
「今日は先輩の所に行かないの?」
そんな菜々ちゃんの問い掛けに私は辺りを見渡す。
「行きたいけど、片付けが…。」
甘い匂いが充満しているここ、家庭科室はただいま片付けの真っ最中。
周りでは慌てながら食器を洗ったり、直したりしている生徒達。
私もさっきまでホウキで床を掃いていたところだった。
すると菜々ちゃんが吹き出しながら
「何今更そんなこと心配してんの!
いつものことじゃん。
大丈夫、咲先輩達には私から言っとくから!」
「菜々ちゃん…。」
「だから早く先輩の所行ってきな!」
「…だいすき~。」
そう菜々ちゃんに抱き着くと、「はいはい。」と軽くあしらわれながら三角巾とエプロンを外してもらった。
これがいつもの放課後の私達。
「じゃぁ、いってくるねぇ。」
「ちょっと待った!!」
自分のスクールカバンを肩に掛けて部室を出ようとしたら、また菜々ちゃんに止められた。
「何?」
「先輩に渡す差し入れのお菓子、忘れてどうするの!」
「あ、忘れてた…。」
これもいつもの事。
「い、いってきまーす。」
「いってらっしゃい…。」
菜々ちゃんのため息混じりの声を背に、気を取り直して次こそはと部室を出た。
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