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「はーい、龍汰への差し入れはこの籠に入れてってくださーい。」
疲れた様子で持っていた籠を下に置く勇也先輩。
そしてその籠に群がる女の子達。
籠にはタオルや色々な物が次々に入っていく。
「勇也先輩。」
「あぁ、花ちゃんか…。」
目を細めてその様子を見ていた勇也先輩に話し掛けると、微笑んでくれた。
「大変ですね。」
「いつものことだからもう慣れたよ。
ってそういう花ちゃんも龍汰への差し入れ、持ってんじゃん。」
「アハハ、すいません。」
「花ちゃんだから許す!」
そう言って勇也先輩は私の持っていた龍汰先輩への差し入れを手に取った。
森下 勇也先輩は龍汰先輩の同級生であり、小学校からの幼なじみ。
そして同じバイト先ということがきっかけで仲良くなり、今では私の恋を応援してくれている人でもある。
「今思ったんですけど、そもそもなんでこんな活動が始まったんですか?」
私の突拍子な質問に勇也先輩は
「確か、ファンからの差し入れが多すぎて困った龍汰が、部活前に思い付きでフェンス外にこの籠を置いてったらしいの。
そしたらファンがその意図に気付いたのか差し入れが籠に入ってて…。
それからこの活動が毎日恒例になったんだよ。」
戸惑いもせず、淡々と答えてくれた。
「へぇ、そうだったんですか。」
「あれ、花ちゃん知らなかったの?」
「はい…。
だって、私が先輩に差し入れを渡すようになったのはつい最近ですから…。」
「あー。
確かにそうだった、そうだった!」
大袈裟なほど納得したような素振りを見せる勇也先輩。
本当に理解しているのかとつい疑ってしまいそうなほどに。
「あ、そろそろ部室戻らねぇと。
この差し入れ持っていかないといけねぇし、これからまたミーティングしないと帰れないし…。」
「が、がんばって下さいね…。」
「この活動、まだ1年も続くんだよなぁ。」
そうため息をつく勇也先輩に苦笑いを浮かべるしかなかった。
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