1章

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それは夏休みに入る少し前の事だった、 ボロアパートのベッドの上で龍一が寝ていた、余りの暑さと、蝉の鳴き声で目が覚めてしまったようだ、龍一は眠たそうに目を擦りながら壁にかけてある丸い時計を見上げる、時刻は7時を少し過ぎた所だ 学校までは走れば5分で着く距離なので二度寝しようと再び布団に潜り込んだ、 しかし、蝉の鳴き声が煩すぎて眠れない 仕方がないのでゆっくりとベッドから起き上がって朝食の準備をすることにした 龍一は一人暮らしだ、両親は赤ん坊の頃に車の事故で亡くなったらしい、゛らしい゛というのは死体はおろか血痕すら見当らなかったというのだ、まるでそこに存在していなかったかのように・・・ しかし、両親の残した貯金があったので質素ながらも生活ができている 龍一が一人暮らししているのにはもう一つ理由があった、赤ん坊の時からずっと龍一の周りで不思議な事が度々起きて親戚全員が龍一を気味悪がっているからだ 、不思議な事とは、龍一が怒った時、悲しい時、つまり感情の変化が大きい時に電化製品が壊れたり、停電したりする、それは高校生になった今でも度々龍一の周りで起きている、しかし本人はさほど気にしていないようだった 龍一は、お世辞にも綺麗とは言えない台所に着くとフライパンに油をひいて卵とベーコンを焼いた、それを食パンの上に乗せると使い終わったフライパンを洗い場へと放り込んだ、次に食パンを口にくわえたままリビングに移動する。
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