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「真琴!どうした?
こっちに来るなんざ、珍しいじゃねぇか?」
息も切れず、悠々着いた振りをしながら、玄関口で待っていた真琴に声をかけた。
真琴はいつも見る、黒い服装では無く、綺麗に着飾っていた。
「あぁ、土方さん!
良かった。やっぱりこっちに居たんですね。
実は、土方さんが暇なら一緒に出かけないかなって聞きに来たんです」
出かける…って、デート…か…?
真琴が?
俺と?
「突然何ですが…」
「…今から?」
「えぇ。今から」
まじまじと真琴を見るが、ふざけている様子は無い。
「忙しいなら…良いん」
「大丈夫だ!ちょっと、待ってろ!」
撤回しようとした真琴を遮り、また、足早に玄関から立ち去り向かったのは山南さんのところ。
「山南さん!」
山南さんの部屋をガラリと焦って開くと、書類仕事をしていた山南がびっくりした様に顔を上げて目を丸くしていた。
「土方君?」
「あ、いや…何だ…
ちょっと出かけて来る。
後頼むぜ」
自分でも、恥ずかしいくらいに勢い良く来すぎちまった…
そっぽを見ながら報告する土方に、先ほどの真琴の声が聞こえていた為、思わず笑いがもれ、仏心が出てしまう。
本当に恋をしたんだねぇ…
あの歳さんが…
しみじみ思いつつ山南は了解した。
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