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「いっ…ってぇ…。…の野郎っ…タダじゃおかねぇッ」
重心が一旦後方になった身全体を前のめりにぐらりと傾げると、左手の刀を持つなりトップスピードで駆け出す。
もう傾けた瞬間から一歩目が動いていた。
鬼が上空から瓦礫の山を見下ろしているのをいいことに地面を蹴り、後方に現れると回し蹴りを放つ。
鬼は振り返ると同時に腹部に打撃を受け地面を滑って停止した。
ザザザザザッ…ザリ…
停止後に顔を上げるも既に炉亜の姿はない。 前に視線を移した途端に紫紺の髪が一瞬で飛び込んできて、懐を突き刺した。
咄嗟に鬼の鋭利な爪を持ったゴツい手に炉亜の横腹が掴まれる。既に何かで擦り抉れたそこに爪が突き立てられた。
鋭利な爪が傷跡に突き刺さる不快な音が遠く離れた隊員たちにも聞こえた。
「ぁあ"あ"あ"ぁ…っ」
激痛が走り、痛みに脂汗が滲むが決して刀は離さなかった。
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