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ー刀は宙を斬ったのだ。
-やばいっっ-
悟ると同時に身体が衝撃を自覚した。
腹にはまった綺麗な蹴りは内臓を潰し炉亜自身を吹っ飛ばす。
当たるものの無い空中では弾丸の如く空気を切り、勢いを殺す術がない。
薄っすらと開けた視界に鬼のニヤリと笑った顔が映り込んだ。
瞬間、背に衝撃が走った。
「グハッ…ッッ」
ドッシャーンっ
空を斜めに突っ切り、争う術なく瓦礫に突っ込む。
しん、と一切の吐息さえ聞こえない無が空間を包んだ。
隊員たちは呆気にとられ炉亜を心配する声さえ出せなかった。自分たちの三席が背後を取られたのを見るのはむしろ初めてに等しかったのだ。
ただただ隊員たちの息を呑む音だけが空間に落ちる。
「…ってぇな」
微かな声が呆気にとられた隊員たちの耳に届く。
途端に瓦礫の一部がゆっくりと動き、大きな音を立ててバランスを保てなくなり瓦礫の山から落下した。
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