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ムクリ、と体を起こした炉亜はさほど瓦礫に埋もれてはいなかったらしかった。
ふらふらと立っている炉亜の額はぱっくりと割れ、血が眉を伝って滴る。
「ゲホッっっ…ゲホッ…っエ」
喉の奥から熱い赤い塊がせり上がってきて自動的に吐き出させられる前に吐き出した。
フラフラと瓦礫の山を降りてくる炉亜の上半身は細身だがそこそこある胸を包み込んださらしだけで、濃紺の袴の上は見事に吹き飛んでいた。そのさらしも先ほどの乱闘で汚れきっている。
おそらく、さらし姿で瓦礫の山に突っ込んだのだろう。細かな傷はもちろん横腹にかすったのかエグれたように見える傷もある。
どちらにしろ完全の状態ではなかった。
「ゲホッ…へっ。お前、相当嫌われてんのな」
力なく左手から刀を落とし、地面に突き刺すと、自らの血で塗れた口元を拭う。
左肩から胸元にかけて巻かれていた、さらしとは違う目的の包帯をシュルシュルっと巻き取った。そこには痛々しい赤く爛れた火傷の跡。
巻き取った包帯が額に巻かれると早速赤くジワリ、と染まっていく。
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