第25章

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――――辿り着いたそこは、僕の記憶にあるものとは、全く異なっていた。 「……あ……」 マンションを取り囲むように集まった野次馬たち。 そばに停められた消防車からは太いホースがのばされ、消防隊員たちは懸命にそこから、目の前の建物へと放水を繰り返す。 消火を手伝おうとしていたのだろうか。 少し離れた場所では、近隣の住人たちが水の入ったバケツを脇におき、呆然と立ち尽くしていた。 おそらくあまりの建物の惨状に、どうすればいいかわからなくなったのだ。 そして、その建物… …僕がついさっきまで居たマンションは炎につつまれ、煙を吐き出し、地獄のような有り様だった。 火元はおそらく最上階の5階。 その辺りは特に火の勢いが強く、部屋の窓から炎が吹き出しているように見えるくらいだ。 消防隊員たちは消火する一方で、中に残っている人はいないかと、避難の確認をしている。 出入り口からときどき人が逃げ出してくるのが見えたものの、もともと学生や会社員の1人暮らしが多く、平日の昼間ということもあり、あまり中に人は残っていないようだった。 「……う……ああ……」 僕は眼前の光景に、身体を震わせ、しゃがみこむ。 手で顔をおおい、恐怖のあまり吐き気がこみあげてくるのを、何とか耐えた。 「ぐ……は……はあ……っ……」 それでも止まらず流れ出す脂汗。 頭の中では幼い日の火事がフラッシュバックして、僕を責めあげる。 歯がガチガチ情けない音をたてて、自然と涙が浮かんできた。 「……うう…ああ……」 忘れることが出来ない恐怖。 身体に染み付いた恐れ。 ……こわい。 何年経ったって…… 今でも火が恐ろしくて仕方ない。
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