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「……あ! もう8時過ぎとる。テレビつけるな」
東京行きの許可がおりて安心したらしい理沙が、おもむろにリモコンを持ち出して、居間のテレビの電源を入れた。
「あ! 理沙、やめや! 食事中に行儀悪い」
おばさんから注意されるものの、気にする様子はない。
いくつかチャンネルを回し、バラエティ番組で手を止めた。
有名な司会者がしきるトーク番組。
10人弱の芸能人が雛壇に座り、恋愛をテーマに赤裸々(?)な話を繰り広げている。
その中のひとり……
『やだー、そんな男、やめときなさいよ。
アンタ、その男からしたら、都合のいい女ね。ヤダヤダ!』
大きな身ぶり手振りで、毒舌に女性タレントの恋愛観をぶったぎる人物。
口調は女性だが、れっきとした男だ。
パッと見は、かなりのイケメン。
金髪に染めた髪を無造作に流している。
まあ、いわゆる『おネエ』キャラってヤツだ。
……他でもない
このおネエこそが、ヨロズヤ・ジョージ。
バンド時代は、全くしゃべらない寡黙なイケメンで売っていたが、解散した途端、その本性を現した。
今では、様々な芸能人に楽曲を提供する一方で、そのキャラクターをいかして、バラエティ番組で活躍している。
彼の音楽センスとギターの腕前には定評があり、プロデューサーとしても有能なのは『チョコレート・デイズ』が売れたことからもよくわかる。
だけどなあ……
(理沙、ホンマにこんなヤツにプロデュースされたいんか?)
クネクネした動きで、客席の笑いを持っていくヨロズヤを見ながら、何とも言えない気持ちになった。
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