1008人が本棚に入れています
本棚に追加
/485ページ
「南方(ミナカタ)くん、おめでとう。コンクールに出した、南方くんの絵、賞取ったって!
大阪のアートギャラリーに展示されるそうやで」
理沙のオーディションが間近に迫ったある日の放課後
職員室に呼ばれた僕は、美術部の顧問の中地(ナカジ)先生から、そう告げられた。
中地先生は、まるで少女みたいにはしゃいでいる。
「……ホンマですか?」
「ホンマ、ホンマ。わたしも顧問として鼻が高いわ。
今度の全校集会のときに、みんなの前で表彰されるから、そのつもりでおってな」
「……はい」
「それとこれ。大阪のアートギャラリーの住所と詳細。
展示は来月からになるから、ご家族と見に行ったらええと思うよ」
「…………ありがとうございます」
先生から、美術館の所在地が書かれた紙を受けとる。
丁寧に、僕の絵が展覧される日程もきちんと書き込まれていた。
「……また次のコンクールも頑張ろな。みんな南方くんには期待しているから」
「そんな……期待なんて……やめてください。オレは、描きたいもん描くだけですから」
「せやね。それで結果が出せてるんやから、すごいと思うよ。
……やっぱり美大を目指すん?」
「そこまでは、まだ決めてません。でも……絵はずっと描いていたいですけど」
そこで先生との会話を終わらせると、僕は部活に出るため、美術室へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!