第3章

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「南方(ミナカタ)くん、おめでとう。コンクールに出した、南方くんの絵、賞取ったって! 大阪のアートギャラリーに展示されるそうやで」 理沙のオーディションが間近に迫ったある日の放課後 職員室に呼ばれた僕は、美術部の顧問の中地(ナカジ)先生から、そう告げられた。 中地先生は、まるで少女みたいにはしゃいでいる。 「……ホンマですか?」 「ホンマ、ホンマ。わたしも顧問として鼻が高いわ。 今度の全校集会のときに、みんなの前で表彰されるから、そのつもりでおってな」 「……はい」 「それとこれ。大阪のアートギャラリーの住所と詳細。 展示は来月からになるから、ご家族と見に行ったらええと思うよ」 「…………ありがとうございます」 先生から、美術館の所在地が書かれた紙を受けとる。 丁寧に、僕の絵が展覧される日程もきちんと書き込まれていた。 「……また次のコンクールも頑張ろな。みんな南方くんには期待しているから」 「そんな……期待なんて……やめてください。オレは、描きたいもん描くだけですから」 「せやね。それで結果が出せてるんやから、すごいと思うよ。 ……やっぱり美大を目指すん?」 「そこまでは、まだ決めてません。でも……絵はずっと描いていたいですけど」 そこで先生との会話を終わらせると、僕は部活に出るため、美術室へと向かった。
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