第七章

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「………っ」 私は膝の上に置いた手をぐっと握る。 手のひらの中。嫌な汗がにじむのがわかった。 ヨロズヤさんの決めたことに不満があるわけじゃない。 私のせいで起こったトラブル。 メンバーにも。スタッフさんにも。ヨロズヤさんにも。 …ファンのみんなにも迷惑をかけている。 だから私が、私自身が、私の言葉でちゃんと説明しなくちゃ。 私は大丈夫、って。……そう言って笑うの。 みんなを笑顔にするために。 「……」 そう覚悟は出来ている。わかっている。 なのに、それなのに。 握りしめた手が震えて止まらない。 「………っつ」 大丈夫、大丈夫、大丈夫。 しっかりしなきゃ。しっかりしろ、私。 みんなのために。そして…… そして…… (涼ちゃん……) ぎゅっと目を閉じた。 まぶたの裏。 彼の姿が浮かぶ。 でもそれは 「理沙」 「え?」 震える手に添えられた手の冷たさで消えてしまった。
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