繋いだ手から伝わるのは――

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ふわり、と彼は笑んだ。緊張の糸が解れたような、柔らかい笑顔だった。 私も笑んだ。何故だろう。私の中で張り詰めていた緊張が解けていく。 「ふふっ」 思わず、声を零してしまう。彼もまた声を立てて笑った。 「……ありがとう」 優しい音色で彼が礼を言う。 「……こちらこそ」 私も頭を下げて礼を返した。 寄り添ったことで、互いの体温が伝わりあう。彼の冷たい手が温まることを私は願った。いや、温まらなくても良かった。それが彼であって。それでも私は彼が好きだから。 「ねぇ」 声をかけてみる。 「?」 彼は少し顔を傾けて、私を見つめてくる。その動きに髪が揺れた。陽の光を浴びて輝く金の髪。髪に似合う青の瞳。深い海のような瞳は美しかった。何となく、私は、自分の髪と瞳を気にした。彼にはどう見えているのだろうか。 「キミは背が高いよね」 「そうか?」 彼は首を傾げた。言ってから私は恥ずかしくなった。今更何を言っているのか。彼の体躯は引き締まった長身であることも肌がしっかりと色を差していることも知っている。その割に、体温が低いのも知っている。 そして、彼が優しいことも。 だから好きになった。勿論、好きなところはもっと沢山あるけれども。 「お前はちっちゃいな」 不意に、彼の声音が高くなった。どきり、と心臓が跳ねる。 「そうかな?」 平静を装いながら、会話を続けた。 「うん。ちっちゃい」 彼は絡められた指に力を入れた。不真面目な彼の爪は、当然、切られてない。なので、少しだけ痛かった。 「でも」 一旦、間をおいて彼は言った。 「好きだ」 「え?」 突然の告白に私は目を見張った。真っ直ぐに見つめてくる彼の瞳は澄んでいた。青い部分に、自分の戸惑った顔が映り込む。 「ちっちゃくても一生懸命背伸びして俺と並ぼうとしてくれる。……そんなお前が俺は好きなんだ」 「!」 彼の言葉を聞いて、驚く。 「だから……お前も安心しろ」 最後は呟くようにして、私の頭を撫でた。大きな手で撫でられて、むっとなる。 しかし、心地の好い冷たいが伝わってきた。 「……うん」 素直に頷いて、彼の温もりに、私は甘えた。
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