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「そういえば、君には言っておかないとと思う」
星座講座は唐突に終わった。何だろうと彼女の顔を見る。彼女の顔は星を見たままだった。
「先輩に振られてしまったよ」
ズキリ。思わず胸が痛くなる。
「なんだ、慰めて欲しいのか?」
「まさか。悲しかったが、自分の中で折り合いをつけた。最終調整だけで充分」
そうだ。俺の知る彼女はこういう奴だ。
星を見る。オリオン座。俺が唯一見つけられる星座。
彼女は俺の思いに気がつかない。一番俺を知ってるくせに、一番重要なことは気がつかない。
そして俺は彼女を誰よりも知っている。だから言えること。
――彼女は俺になびかない。
いっそ告白でもして玉砕しようかとも思うが、今の関係が壊れて欲しくない。俺はただ、こうして彼女と会うだけで幸せなのだ。これを壊すなんて、出来ない。
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