氷の花

4/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「そういえば、君には言っておかないとと思う」 星座講座は唐突に終わった。何だろうと彼女の顔を見る。彼女の顔は星を見たままだった。 「先輩に振られてしまったよ」 ズキリ。思わず胸が痛くなる。 「なんだ、慰めて欲しいのか?」 「まさか。悲しかったが、自分の中で折り合いをつけた。最終調整だけで充分」 そうだ。俺の知る彼女はこういう奴だ。 星を見る。オリオン座。俺が唯一見つけられる星座。 彼女は俺の思いに気がつかない。一番俺を知ってるくせに、一番重要なことは気がつかない。 そして俺は彼女を誰よりも知っている。だから言えること。 ――彼女は俺になびかない。 いっそ告白でもして玉砕しようかとも思うが、今の関係が壊れて欲しくない。俺はただ、こうして彼女と会うだけで幸せなのだ。これを壊すなんて、出来ない。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!