僕と、君と、怖いモノと、

10/16
前へ
/359ページ
次へ
ーー見るべきではなかったかもしれない。 バケモノの口から発せられる呻き声に吐き気を催し、口を抑えながらどうしようもなく後悔した。 ”危ない、これは、本当に危ない…!” まさか、こんなバケモノが出てくると思わなかった。 ”直ぐに、引き返そう…!!” 危機を知らせる本能に彼が振り返り、元来た道に行こうと木々から離れた瞬間だった。 突如バケモノの呻き声が金切り声に変わり、その水瓶を水面に叩きつけた。 波立つ水面に巻き込まれ、その水圧に、小柄な少年の身体は吹き飛ばされる。 「うわあぁっ!」 襲い来る荒波に、悲鳴を上げた。 瞬間、しまったとも思った。 口を押さえ振り返る。 バケモノは既に、少年を視界に捉えていた。 「殺される…っ!」 慌てて立ち上がり、態勢を直して、街へ走り出す。 が、向こうから見ればこっちはトロいネズミのようなものだ。 その機動力には、圧倒的な差があった。 ”逃げられない…!!” バケモノが水を割きながら、こっちへ向かってくる。 少年は、声を振り絞って叫んだ。 「た、助けてっ!!」
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加