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「ごめんね、びっくりしたよね」
海の方角から現れたその青年は、心配そうに気遣いながら少年を立たせた。
「大丈夫か?」
そう問いかけられて、少年は慌てて首を横に振る。
そして青年の顔を見上げ、応えた。
「い、いえ…。大丈夫です。……あ」
少年はハッとした。
青年の、その容姿は。
「あ、あの」
「ごめん、ちょっと待ってて」
訊ねかけようとした声は、遮られた。
青年は少年を置いて、バケモノの傍へと駆けて行く。
バケモノは無数の剣に貫かれた部分から黒い液体を流しながら、低い風のような息を漏らし、力無く横たわっていた。
血走った目は、それでも青年の姿形を捉え続けていた。
しかし青年もまた、その姿を見据えていた。
そして自身の足で、水面をひとつ蹴り上げた。
持ち上げられ宙に浮いた水は、またひとりでに形を変え、剣へと生まれ変わった。
水晶のようなその剣の刀身は青年の身長と同じぐらいで、刃は水面のような美しさをもちながら、鋭く威圧を放っていた。
剣を見たバケモノは、拘束から逃れようと再び暴れ始めた。
ひどく叫び声をあげながら。
だけど青年は、躊躇なくその頭部に目掛けて、剣を振り下ろした。
バケモノは、手で押さえることも出来ないまま青年の一閃を受けた。
剣の軌跡に沿うように、頭部から黒い液体を流れる。
泣き叫ぶように金切り声を上げる、大きなバケモノ。
青年はその金切声に怯むことなく、バケモノが大切そうに抱えていた水瓶に剣を向け、目の前で叩き割った。
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