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ーーあの夢が、何処まで本当かは分からない。
でも、あの小さな少年が自分の幼い姿であったことは、何故か確信していた。
(じゃあ、あれが僕の。お父さんとお母さん、なのかな…?)
「…リクヤは、これから何処かへ行くの?」
リクヤの考え事を断ち切るように、シオンは気さくに訊ねかけた。
「え…。いえ、旅の当てはありません」
顔を俯かせ、リクヤは弱々しく首を横に振る。
元々 自分がどこに行こうとしていたのか、何故旅をしていたのかも、リクヤにはわからなかった。
分かっているのは、自分が途方もない旅を独り続けていたことだけだった。
「そうなの? じゃあ暫くここに居なよ。」
「え?」
あっさりとした物言いに、リクヤは思わず顔を上げてしまった。
そうして視界に映ったシオンは、ただ優しく微笑んでいた。
「今のところ大丈夫そうだけど、まだ疲れは取れていないと思うし…。このまま旅に行かせるのは心配なんだ。
俺の家、狭いけど使ってくれていい。だから、もうちょっと休んでいって?」
「……」
確かに、また前みたいなことになって助かる保証はない。
それに今頃になって疲れが溢れたのか、身体も怠い。
なにより旅の意味が見出せない今、当てもなく動かない方がいいのかもしれない。
…迷惑かもだけど、今は頼るしかないのかもしれない……。
リクヤは少し悩んだが、やがて、
「あの…、暫くよろしくお願いします」
と、深く頭を下げた。
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