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その謙虚なリクヤの態度に、吹き出したようにシオンは苦笑した。
そして笑みを溢したまま、リクヤにやめるように促す。
リクヤは迷いながらも、おずおずと頭を上げた。
「でも、シオンさん…」
「シオンでいいよ?」
そう言われても、相手は明らかに歳上だ。
構わないと言われても、呼び捨ては気がひける。
「じゃあ…、シオンくん…。
シオンくんは…。どうして、こんなに僕に優しく…?」
リクヤは内心、ひどく戸惑っていた。
自分とシオンは他人なのだ。
それも、全く面識のない。
素性の分からない自分を助け、介抱してくれ。
あげく当てがないならと衣食住を提供してくれるなんて。
優しすぎて、逆に心配になってしまう。
だけどシオンは、ほとんど戸惑いもせずに言った。
「うん…。どうしようもなく、本当に、君のことを助けてあげたいって思ったんだ」
怪訝になっているリクヤに、シオンは微笑みかける。
その声や笑みには裏がなく、弱っているリクヤに安らぎすら与えてくれているようだった。
疲弊した胸の奥に、明かりが灯ったようだった。
「…決まりだな? じゃあ早速俺の家に行こう!」
そう言って、シオンはリクヤの手を取った。
そして軽い足取りで、白い街へとリクヤを引っ張っていく。
「リクヤも色々気になることがあるだろ? 大丈夫、ちゃんと俺が面倒見るから!」
道中で振り返ったシオンは、なんだかとても嬉しそうだった。
これから暫くシオンの家に居候になるリクヤとしては、心から歓迎してくれているらしいシオンの態度は、とてもありがたいことだった。
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