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(…気になる、こと……)
確かに、気になることは沢山ある。
一体ここは、何処なんだろう。
あのバケモノも、それと戦っていたこのシオンくんも、一体何者なんだろう。
そして旅人だった僕は、どこに向かおうとしていたのだろう。
ーーふと、後ろから水の跳ねる音が聞こえた。
波の優しい音ではない。
例えば魚が宙へ飛び跳ねたような、水を蹴りあげたような。
そんな音だった。
(なんだろう?)
よく響いている音だが、どうやら自分より前を行くシオンには、その音は聞こえていないらしい。
独り疑問を抱きながら、リクヤはシオンの手に引っ張られながら音のする方へと振り返った。
(……あれ?)
そこには。
裾が長過ぎて少女が着るワンピースのようになってしまっている、白い服を着た少年が海を蹴って遊んでいた。
(あんな子…、さっきまでいたかな…?)
裾から伸びる白く細い足には包帯が無造作に巻かれており、腕もまた、同じ状態だった。
(……!)
リクヤの視線に気付いたのか、少年は海の水面からゆっくりと顔を上げ、こちらを見た。
ただ真っ直ぐ、じっと。
リクヤを捕らえるように。
恐ろしいほどに真っ赤な、2つの瞳で。
(うぅ…っ)
気まずくなり、リクヤは急いで視線を逸らした。
前に向き直り、シオンの背を追った。
(…何か、ざわざわする…)
胸元に手を置き、握り締める。
あの子はまだ、こちらを見ているのだろうか。
リクヤは街に入るまで、背中に刺すような視線を感じていた。
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