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「あいつらの一番の狙いは、この街の坂道の頂上にある泉なんだ」
「泉…?」
「そう。そこが、この海の原点でもあるから。
その泉から溢れ出る水は、この街を流れて大きな海へと広がる。
海の命そのものなんだ。
そこを傷つけられたら海は枯れて、俺の負け…。
だからそこへは絶対行かせないし、街へも入れさせない」
不意にシオンは振り向き、リクヤを見た。
目を閉じるか、閉じないか。
瞼の重みと戦っているリクヤを見て苦笑いしながら、その頭に手を添えた。
「眠いか? そうだね、疲れたね」
そう言いながら、リクヤの毛布を肩まで掛け直してやり、背中をそっとさすってやった。
「シオンくんは…、正義の味方なんですね…」
気持ち良さそうにうとうとしながら微笑んでそう言うと、リクヤはその目を閉じ、静かな寝息を立て始めた。
「うん…。今度こそ、正義の味方になれるように頑張るよ。
…おやすみ」
その姿を愛しそうに目を細めて見つめ、ポツリと呟いた後、シオンも自身を床に横たわらせ、眠りについた。
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