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「よーし! リクヤ! 今日は3人で海にでも行くか!」
「うみー? うみってどんなのなの?」
「とっても広くて綺麗なとこなんだよ。
良かったわね、リクヤ」
「…うん、うん!! 僕、楽しみ! ねぇ、いこ! おとーたん! はやくいこー!」
「うおー、慌てるなよ! 海は逃げないからな!」
向こうに見えるのは、笑いあう3人。
会話からして、どうやら家族のようだ。
真っ白な背景に、その姿と彩りはよく浮かび上がっている。
流行りの化粧と髪型をしている若い母親に、落ち着いた黒い髪色にどことなく幼い雰囲気を残した、若い父親。
その二人に飛びつく息子であろうあどけない子供は、まだたどたどしい口調で目一杯喜んでいる。
その少年を抱き上げる父親、微笑ましそうに横でそれを眺める母親。
見るからに、幸せな家族だ。
そしてそれを、少年は少し離れた場所から傍観していた。
遠くではしゃいでいる家族から目が離せなかったのは、その温かな光景に見憶えがあったからだった。
「これは…。僕の…」
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