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ココアに手を伸ばした。
それが入っているマグカップは、手を温めるのに充分な温度を伝えてくる。
少しすすると、その温かさが身体に浸透していくのが分かった。
「温かい…」
温かい、温かい。
胸が締め付けられるようだった。
それは、悲しいんじゃない。
今、寒さから解放され、温かなこの場所で、生きている。
その事実が胸の奥に染み込んでいくような、そんな気がしたからだ。
少年はココアと共にゆっくりと、しかし無我夢中でコーンシチューを飲み込んでいった。
そして2つ共飲み干した後、ほとんど調子を戻した身体でベッドから降り、外へと続く扉を探した。
(こんなにも優しく看病してくれたんだ。会って、しっかりお礼が言いたい…)
家の住人は今、ここにはいない。
それが直ぐ分かったのは、この家の中にトイレやバスルーム以外の個室がなかったからだ。
自分以外の人の影は、なかった。
一室しかなくとも広いこの部屋には、暗めの赤地に、綺麗な模様の入った絨毯がフローリングの上に敷かれていた。
バスルームとトイレの他には、テーブル、キッチンなどの設備があった。
それらを認識しながら、彼は玄関を見つける。
そしてそこに向ったとき、少年は目を丸くして覗き込んだ。
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