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「玄関に…、水が溢れている…」
玄関には、水溜りよりも存在感のある水が溢れていた。
玄関の扉もよく見る開閉式の扉ではなく、分厚いカーテンのようなものだった。
その裾は、丁度水に触れていない。
そして少年の隣には、自分と同じぐらいの高さの梯子が水の元へと降りるように取り付けられていた。
”覗き込む”と表現したのは、玄関である家の入り口が、自分が足を着けている部屋とは水平な場所になかったからだった。
この仕組みを見ていると、この水は災害とかではなく、コレで当たり前、という感じだった。
「靴は…、ないみたい」
少年は梯子を伝い、下へと降りた。
足首にまとわりつくその水は、行き倒れたときを思い出させる。
素足を水につけ、白いカーテンを開け外へ出た。
「う、わー…」
青空を映し出すこの水は全ての白い砂を覆い尽くし、果てなく伸びていた。
海のように広く、川のように浅い、果てしない水の世界だった。
そしてこの水の世界にあるこの街の家々は、ほとんどが砂のように真っ白で、水に浸からないように少し高めに造られている。
まるで、ファンタジーの漫画のようだ。
少年はこの光景に暫く圧倒され、柔らかく吹く風を受けながら立ち尽くした。
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