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坂の終着点に近づけば近づくほど、その音は大きくなり異様性を増していく。
地面を伝わる、激しい振動。
足元がおぼつかなくなり、何度も倒れそうになった。
それでも歩み、少年はどうにか坂を下りきった。
街の出口でもあった坂の終着点から一歩踏み出した少年の眼前には、視界に捉えきれないほどの広大な海が広がっていた。
一度見たら忘れられなくなるような、素晴らしく青い世界だった。
しかし同時に、その絶景を台無しにするものを、少年は捉えてしまった。
”バケモノ”が、海の水面で暴れているのを。
大きく、蛇のような長い形。
ぐしゃぐしゃに乱れた毛並を振り乱す、とてつもなくおぞましいバケモノを…。
(や、やだ! なに!? なにあれ!?)
その存在を認識して直ぐに、少年はパニックになりながら、真白の砂浜にポツポツと生えている木々の後ろに隠れた。
そこから様子を伺う。
するとその姿を、もっとハッキリと捉えることが出来た。
身体の肋骨が浮かび上がった、骨のような女性の上半身。
銀や金のイヤリングやネックレス、指輪などで着飾っており、下半身は蛇のように長く、びっしりと鱗が敷き詰まっていて。
先端はボロボロの魚のヒレになっていた。
顔は、痩せこけた魚のような女性で、赤い口紅が不気味さを際立たせている。
ぐしゃぐしゃの毛並は位置合い的に髪の毛のようだ。
頭部の頂点から少し下までは真っ黒で、そこから下は、明るい茶色になっている。
目はもちろん普通ではなく、ギョロリと開き、血走っていた。
そんな奴が今、両手で抱える黒い水瓶を振り回し、髪から水を滴らせながら暴れているのだ。
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