喪失と湧出

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 曇った眼鏡奥の窪んだ瞳で私を視認すると、ふっと柔らかく口角を上げ、恭しく一礼する。  それが演技でない事に、私は怒りを覚えた。 「何ニヤニヤしてんのよ爺……。とっとと退職しろ……」 「えっ?」  目を丸くして、私を見詰める間宮。  私がぼそぼそと呟いたのが聞こえてしまった様だ。 「……いえ、何でもありません。独り言です。……それより咲夜は……?」  咲夜が死んだなどとほざく屑と話しているだけで吐き気がする。  無駄な問答は必要無い。 「解りました。では、こちらにどうぞ」  間宮も私の心中を察したのだろうか、先程と違って無駄な動作を省いているのが解った。  無言で先達をする間宮の後を、やはり無言で歩く私。  間宮の歩く速度の遅さに苛付いてくる。
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