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私には娘がいた。
高校二年生の、とても真面目で、物分かりの良い娘。
口答えなんてしないし、そもそもそういう状況を作り出さない。
少し天然で危なっかしいけれど、そこもまた可愛い。
絹の様にきめ細かな純白の肌は、触れるだけでこの汚れた手を清めてくれた。
微風にたなびく度、栗色の髪から漂うシャンプーの香りは、私の鼻孔をくすぐって、あの血生臭さを拭い去ってくれた。
あのくりくりとした大きな瞳に見詰められている時間だけが、私に癒しと安らぎを与えてくれた。
私に似て、顔の造りが癒し系だと周りから言われれば、口では謙虚しつつも、心では舞い上がったものだ。
全てにおいて、完璧。
容姿も、勉学も、身体能力も、性格も、なにもかも。
愛している。
この世の誰よりも愛している。
貴女が、私にとって唯一変わらないものだから。
そんな貴女が、自殺しただなんて、誰が信じられるというの?
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