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『咲夜さんが、お亡くなりになられました』
繋かってきた電話は、病院からであった。
親族の方ですかだの、落ち着いてだのと色々言われた気がする。
しかし、私の左脳にはその文字の羅列だけが色濃く刻まれた。
深夜まで続いた撮影がやっと終了して、帰宅した今の時計が示すのは午前四時。
私が磨きあげ滑らかな輝きを披露する窓硝子。
その向こう側では、うっすらと陽光が差し込む黄金色の空が憂鬱そうに雲を浮かべていた。
その天の下、鳥共が喧しく騒ぐ、騒ぐ……。
この街は樹が多い事に比例して鳥がよく集まる。駆除したいものだ。
そんなどうでもいい事に頭が働く程私は疲れていた。
だからかもしれない。
電話の馬鹿馬鹿しい戯事の意味を理解出来なかったのは。
眠い眠い眠い。
でも、あの娘の事を無視する訳にはいかない。
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