それは、ある満月の夜の事でした。

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「・・・・」 次の瞬間、視界に広がったのは真っ白な空間だった。 先ほどまでの浮いているような感覚とは真逆で、ずっしりと体が重い。 視線をゆっくり滑らせると、横に吊るされている点滴が等間隔で滴を落としていた。 ふと、右手に温かい感触がある事に気づき、樒影は点滴とは反対方向に視線を動かす。 綺麗な金糸が、目の前で揺れた。 「・・樒影・・!!」 疲れを色濃く映した表情が、一気に生気を取り戻したように輝く。 「し・・き・・?」 「良かった・・ほんとに・・」 少しかすれている獅桔の声に、どれほどの心配をかけてしまったのかと樒影は申し訳なさが込み上げた。 それと同時に、大事な事を思い出す。 「獅桔・・!! 子供は・・っ!」 咄嗟に起き上がろうとした時、激しい腹痛が樒影を襲った。  
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