それは、ある満月の夜の事でした。

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「ダメだって! まだ起き上がっちゃ!」 慌てて獅桔が樒影をベッドへと横たわらせる。 「だって・・どこ・・?? 俺と獅桔の子供・・っ、まさか・・っ!」 錯乱したように呼吸が乱れ、ボロボロと涙を溢す樒影を、獅桔はぎゅっと抱きしめた。 「大丈夫、無事に生まれたよ。だから安心して?」 獅桔の優しい体温と穏やかな口調が、また違う涙を誘う。 「ほんとに・・??」 「うん。今はまだ保育器にいるからここにいないだけ。可愛い男の子と女の子だよ」 「良かった・・」 脱力にも似た安堵感の後、樒影に強烈な眠気がやってきた。 「良く頑張ったね。ありがとう樒影」 ーーー今は、ゆっくりお休み。 微睡の中で聞こえた声は ほんの少し、潤んでいるような気がした。
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