第零話 『改変の時、魔女の存在』

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 青年が言い切ると同時、場の雰囲気が豹変する。  温度は急激に下がり、空気が振動する。  青年は柄を軽く握り、腰を浅く落とす。若干前のめり気味に重心を足の指先へともっていき、いつでも飛び出せるようなスタイルを取った。その様はサムライの居合そのもの。  彼の口元が微かに動く。既に何らかの術式を発動させていることが窺える。  魔力は微量ながら青年を覆うようにして発生していることから、術者自身を強化するための術式であると断定。  以上のことからゼダは青年を特攻型――それもかなり強引な――の戦士であると判断する。  人形の自立プログラムにスイッチを入れ、コントロール権限を移譲する。  両の腕を肩と水平にし、炉にくべた火をより強く激しく燃やす。  いかなるタイミングで飛び掛かられようとも即座に対応できるように。  どのようにして攻めるか、既に互いに方針は決まっていた。  青年はゼダを手早く切り捨てる事。  ゼダは青年から時間と一瞬の隙を勝ち取る事。  お互い睨み合う。隙を窺い、硬直した状態が続く。  高まりあう緊張。熱くなる胃を抑え、思考はよりクリアに、腕には熱を持たせる。炉の火は時を刻むにつれてその勢いを増してゆく。  どちらも相対する者が指一本でも動かせば即座に何かしらの行動が出来るよう準備は整っていた。
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