第零話 『改変の時、魔女の存在』

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 ゼダの視線の先、少女の介入によって戦闘を止められた青年は水を差されたと言わんばかりに舌打ちをし、柄から手を放す。  ゼダとの相対を少女に譲り、少し後ろへと下がり佇んだ。  少女は小さく「ありがとう」と言うと、前に出てゼダの真正面に立つ。 「ふむ、君も特殊な術式をお持ちのようだ。今回の訪問者は実に面白い。全く私を飽きさせる気がしない」  話をしながらもゼダは青年を警戒していた。  青年の足先には先程よりは軽いが微かに重心がよっている。身体強化の術式が霧散したような跡もないため、いつでも飛び掛かれるように注意はしているようだった。  クツクツと笑いながらも青年の時と同様に少女の重心、仕草、佇まい、炉から漏れ出る魔力残滓など様々な要素を見極め、戦闘の行動指針を組み立てる。 「……む」  観察をするなか、ゼダはひとつの違和感を覚える。  ――音がする。  青年と相対していた時にはなかった音。  唸るような、叫ぶような。鈍い音があった。  音源は少女。それに気づいたとき、ゼダは少女への警戒を一層強めた。  炉の火が常にうねりを上げている。それも悲鳴に近い怖気の走るような甲高い駆動音。術者への負担なんてお構いなしの状況。  よくもまあ平常心のままいられたなと感心するほどの暴力じみた炉の稼働状況。
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