第零話 『改変の時、魔女の存在』

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「Fliegen《飛びなさい》」  少女が呟くと同時、宙に青い球体が複数浮かぶ。  球体の周りを紫電の魔力が火花を発しながら奔る。  色の付いた魔力は高質かつ高濃度で複雑な術式が組み込まれている場合が多い。  さらに、赤色は火を用いた術式。青色は水を用いた術式と言った風に色で使用する術式も大雑把だが知ることが出来る。  通常、このような場面では術者は自らの魔力を隠す。そうしなければ次の一手を敵に見破られ、対策を立てられた上に逆に利用されかねないからだ。  しかし、少女は臆すことなく挑発するかのように色を見せつけてくる。  このような人間には種類がある。自分に絶対の自信を持つ無謀者(ナルシスト)と、油断という隙を突け狙う狩人と。  ゼダは判断した。彼女は後者である、と。  一芸に特化した固定型の巨大な砲台。それがゼダの少女に対する見解だ。  さらに、少女の魔力色――紫は雷の属性。食らえば一瞬の隙と、次射の装填が出来る。  ――なるほど、これは確かに、相性が悪い。  いくら頑丈とは言え、所詮は人の手で作り上げた造形物。疑似神経から送られる電気信号を麻痺させられてしまえば、それはただの肉の塊だ。  ならば、とゼダは思案した。新たに組み立てられた計画書の数は三十二。  迂闊に距離を取ろうものならその銃口の餌食にされること間違いなし。  しかし、動かぬ敵なら距離を縮めるのが道理。いくら属性付加をされようと、掻い潜ってしまえばこちらのものだ。
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