第零話 『改変の時、魔女の存在』

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「現状の世界なら組織の中からでも変えられるって思ってたけど、やっぱりそれも限界があるかな。だったら、組織なんて枠組みじゃなくて、もっと……もっともっと中から仕組みを変えればいいんだ」  闇の合間を抜けるようにさす月光。それを掬うように、少女は手を伸ばし、 「Alle hoffen nicht,Ich hoffe.《周りが貴方を望まなくても私は貴方を望もう》  Sie bestreiten es,Ich antworte mit einem.《貴方が否定されても私は貴方を肯定しよう》  Wenn wer Sie sein werden, bin ich nicht wichtig.《貴方が誰だろうと関係ない》  Ich helfe Ihnen.《私は貴方を助けるだろう》  Ich bin ein Freund der Gerechtigkeit.《私は正義の味方》  Weil es immer die Gerechtigkeit in der Welt gibt, und es gibt die Welt mit mir.《正義は常に世界にあり、世界は私と共にあるのだから》」  ひとつの詩を読んだ。  指揮をするように少女は腕を振るう。その声は水の如く透き通り、そして流れるように響いた。  カチリとパズルが組み合わさる。  それは構造の組み換えの音だ。  空と空の隙間にヒビが入り、次第に大きくなって割れ穿つ。  割れ目から出てきたのは扉だった。それも少女や青年よりも遥かに大きく、禍々しさを感じさせる古い古い荘厳な作りの扉。  本来存在しえないモノをこの世に厳戒させる創造異界。
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