第一話 『爽やかな空、穏やかでない一日』

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 ●○●○●○●○●  私こと天野 歩翔(あまの あゆか)は朝というものが大嫌いだ。  カーテン越しの陰鬱な木漏れ日。朝を告げる小鳥のとがり声。隣の家からは、今年晴れて幼稚園に入園した翔太君の大咆哮……。  最後のは朝とは関係ないが、まあいいだろう。  とにかく、朝の一体全体何が良いのか私にはさっぱりわからない。  神様とやらがいるのならば私は問いたい。どうして朝、昼、晩と一日が三つの時間帯に分かれるようなシステムを作り上げたのだろうか。もう昼と夜だけでいいじゃないかと私は思う。  朝なんて人を不機嫌にさせる要素がありすぎる。眠たい、食欲無い、学校行きたくない、と素敵な三拍子が揃っているのだ。  早起きは三文の徳、なんて諺があるけど、誰か私に朝の素晴らしさとその諺についてご高説頂けないだろうか? 出来れば作文用紙二枚以内で分り易いものを求む。 「はぁ、起きちゃったものはしょうがないか。  う~、朝起きて最初にやることが大自然へのいちゃもんだなんて……自己嫌悪」  一日の始まりがこんな調子ではこの先が思いやられる。  この後、いつも通りに学校があるのだ。しかも、昨日終わらなかった仕事も残っている。それ以外にも打ち合わせとか準備とか、とにかくやらなければならないことは沢山ある。  全て投げ出して遊びに行きたいと願う心を自制して、諦めの溜息を吐くことで無理矢理我慢した。
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