第一話 『爽やかな空、穏やかでない一日』

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 お風呂場横の洗面台に到着。  蛇口を捻って出てきた水は春を少し過ぎた今でも冷たく、私の寝ぼけた頭を叩き起こすには最適だった。 「っぷぅ……」  お湯はお肌に悪いと聞いた時から洗顔には冷水を使うようになった。お陰様で締りのあるピチっとしたお肌を手にすることが出来たのだが、やはりこの時期は堪えるものがある。  早く暖かい季節が来てほしいと切に願う。  さて、洗顔の後は朝食の準備だ、と言っても、私は基本的に朝はあまり食べない。  そのため準備と言えるようなことは特にないのが現状。  冷蔵庫をモゾモゾと漁り、野菜室からキャベツを取り出す。それをちぎって皿に盛れば朝食の完成だ。気分によってはこのメニューにヨーグルトが付くときもある。  簡単でしょ? お通じのためにキチンと野菜だけは摂取している。  本当はキチンと栄養を取るべきなのだろうが、この食生活を何年も続けているので今更キチンとした朝食を取る気にもならない。  ようするに私は面倒くさがりなのだ。  モシャモシャとキャベツを咀嚼し、コップに並々と注いだ牛乳を一気に飲みほす。  これで私の朝食は終わり。  後片付けを終わらせれば残るはシャワーと身支度のみだ。  壁に掛かった時計を見ると時刻は六時三十分。七時には家を出れば学校には間に合うから、少し余裕が出来た。  え? 女の子なら身支度には時間が掛かるだろうって? いや、だってお化粧とかよく知らないし……。ていうか、お化粧をしている時間を私は睡眠に回したい。学生なんだから、色恋沙汰に現を抜かさず、自分の輝かしい将来を想って勉強すべきだと思うのだよ私は! ……でも彼氏はちょっと欲しいかも。  なんてくだらないことを考えていくうちに時間は過ぎていく。時計は四十五分を刺している。出来た余裕は全て妄想に回ってしまった。 「うわっ、ちょっと余裕かまし過ぎた!」  バタバタと走って向かう脱衣所。  眼鏡は洗面台の上に置き、汗まみれのパジャマを洗濯籠の中にダンクする。シャワーの温度は少し高めに設定し、サッと浴びる。  後は下着を付けて制服に身を通せば私の身支度の出来上がりだ。おっと、髪を乾かすのを忘れていた。
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