第一話 『爽やかな空、穏やかでない一日』

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 上機嫌に鼻歌まじりで学校に到着したのは七時十分。校門をくぐり、教室に向かう前に私はとある部屋へと向かう。  ガラリと扉を開けた先にあるのは、二つの長机が並べられた会議室のような部屋。  部屋の上には生徒会室と書かれたプレートが埃まみれで鎮座している。  少し早すぎたのかまだ誰もこの部屋に来てはいなかった。  壁に立てかけられたパイプ椅子を出して組み立てる。寒い所にあったせいで座るシートの部分がとても冷たいが、我慢するしかあるまい。立ちっぱなしで作業するのも変だし。  長机の上には昨日まとめていた各部活動の今年度の上半期予算案の原稿が乱雑に並べてある。私はそれをかき集め、約二十枚ほどの紙の束になった原稿に間違いがないかもう一度確認といことでサッと目を通す。  ゆっくりと、時間をかけて数字の桁やら部活動の名前やら去年との差額やらを一つ一つ確認していく。  特に目立ったミスもなく、これなら会長に提出しても大丈夫だろう、とホッと一息つくと、聞きなれた音が直上で鳴り響いた。  壁にかけられた時計を見ると針は七時四十分を示している。  私の学校では七時四十分からHR(ホームルーム)が始まり、五十分には授業が始まる。朝が早いせいか、帰宅時間も他の学校に比べて幾分か早い。  何故会長は生徒会室に来ないのか、なんて疑問は置いておく。今更だが、あの自由気ままな人には何を言っても無駄だろう。  小走りで廊下を高速移動し、担任の先生が来る前に自分の座席に無事――最後の方はスライディングに近い形だったが――着席することに成功した。  HRは担任のどうでもいい連絡事項から始まる。明日は避難訓練があるとか、部活動予算案承認決議の集合時間と場所とか、いろいろな情報が生徒に伝えられていく。  教室では話にしっかりと耳を傾ける者。友達と喋っている者。提出物の写しをしている者。寝ている者とその過ごし方は千差万別だ。  私はというと、担任の先生の声が子守唄となって私の耳をくすぐる。ついついウトウトっとしてしまい、何度も船を漕いでしまう。  私は今日もまた何もない平和な一日が始まるのだと思うと眠気に誘われつい気持ちよくなってしまうのだった――。
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