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「知らない天井だ」
そんなお約束を呟いた私はベッドから体を起こし、辺りを見渡した。
周りは白のカーテンに囲まれ隔離状態。ほのかに匂うのはアルコールか。
学校でアルコールとベッドと言えば保健室しかない。
はて? 私はいつの間に保健室に厄介になっていたのだろうか。
現状把握に努めるが、なかなか出てこない。
なんだかお昼頃からの記憶がすっぽり抜け落ちているが、何かあったのだろうか。
うーん、と人差し指を額に当て、悩んでいると微かな足音とともにカーテンが独りでに開いた。
「やぁ、気分はどうだい?」
優しげな口調で話しかけてきたのは白衣の似合う保健室の教師、原田。
保健室なんて滅多に使用しないから顔を合わせる機会などないに等しい。
しかし、この教師はとある理由からちょっとした学校の有名人となっていた。私が彼の名前を覚えていたのもそのせいだ。
それはさておき。
なんで私は保健室になんているのかなぁと思案していると、先生が手に持っていた水の入ったコップと錠剤を私に渡してきた。
「まだ顔色が悪いから無理しちゃいけないよ。それは胃薬だから飲んでおくといい」
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