1人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
言われてみれば心なしか胃の辺りがモヤモヤする。
気が利く先生だなぁ、と適当な当たり障りのない感想を思い浮かべると、視界の隅に何かが映った。そちらへと首を向けると真っ青な顔色をして唸っている学生が七、八人ほど私の様にベッドで横になっていた。なんとなくだが、見覚えのあるようなないような、そんな顔ぶれだった。
「あ……」
だんだんと蘇ってきた記憶。
どうやら、今日の食堂もなかなかに過激な料理を私たちに提供してくれたようだ。
この連中も食堂の飯を食って生地獄を見せられた敗戦者たちだろう。
「あ、ありがとうございます」
受け取った薬を飲み込んだ私は水をもう一杯要求した後、気分が良くないと言って横になった。
目を瞑り、このまま保健室で午後の授業をエスケープするのもいいかな、なんて事を考えた矢先、電話のコール音が響く。
それは保健室の壁に縫い付けられた職員用の校内電話からだ。
原田がそれを取り、相手の声を聴いた後、苦笑を浮かべて口を開く。
「――ええ、若干名まだ目を覚ましていませんが全員無事。命に別状はないです。病院沙汰にもならなさそうですね。いやー、久しぶりに冷や汗をかきましたよ。どうやら今日はBセットを食べた生徒が運ばれたみたいですね。Aセットを食べた生徒はなんだか眼が凄く充血してましたが、大事無いということで帰しました。いやはや、これで僕の評価も安定でしょうね。まったく、人死にが出なくてよかったよかった」
明るい口調でとんでも発言する教師は
「いい加減あの食堂は潰してしまってもよいのではないですか? 今はまだ大事にはなっていませんが、何かあってからでは遅いんですよ。というより、今まで大事にならなかったのが不思議なくらいです。そうなった場合の責任は僕が取らないといけないんですから」
と、続けざまに生徒達を諭す立場とは思えない自己保身的思考のいい加減教師が笑った。
これが彼がこの学校で有名となった原因だ。
腹黒。その一言に尽きる。
最初のコメントを投稿しよう!