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「……そうですか」
続けざまに何か言うかと思いきや、原田は左手で私の頬に優しく触れ、ベッドの上にのし上がってきたのだ。
私の上に覆いかぶさるような形で原田は静止する。
互いの鼻頭が触れそうなほどの距離。
咄嗟の出来事にフリーズしてしまった私の額に原田は自らの額を当て、目を閉じた。
原田の吐息が私に伝わる。熱を持ったようなそれは私の心を陶酔させ、甘く、切なく、恍惚とさせる。
しばしの静寂。原田は一向に動こうとしない。
顔が熱い。きっと私の顔は茹蛸の様に真っ赤になっているに違いない。
こんなことされるのは初めてだった。なまじ原田の顔がかなり整っているせいもあって、余計にドキドキさせられる。お陰様で私のボルテージは留まることを知らない。
第三者がこの現場を見たら間違いなく誤解するような光景だろう。恋人同士の逢瀬というわけではないが、恥ずかしいものはある。
これこそ彼の言う『彼の評価』に大きく響く行為なのではないだろうか。
「わかりました。先生には私から言っておきますから、ゆっくり休んでくださいね」
「………………」
静かに目を開いた原田は微笑を浮かべ、少し残念そうに子犬ちっくな愛らしい表情でそっと私から離れた。
さっきとは違った意味でドキドキしたが、まぁ変な展開にならなくてよかったと心から安堵する。……ちょっと残念な気がしないでもないが。
さて、正直こんなにも軽く了承が得られるとは思ってもみなかった。
でもせっかくの機会だ。これは僥倖とばかりに私は目を瞑った。
午前中の授業は全て睡眠学習に使用したというのにまだ眠い。
疲れてるのかなー、なんて思う前に私の意識は落ちて行った。
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