第一話 『爽やかな空、穏やかでない一日』

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「……そうですか」  続けざまに何か言うかと思いきや、原田は左手で私の頬に優しく触れ、ベッドの上にのし上がってきたのだ。  私の上に覆いかぶさるような形で原田は静止する。  互いの鼻頭が触れそうなほどの距離。  咄嗟の出来事にフリーズしてしまった私の額に原田は自らの額を当て、目を閉じた。  原田の吐息が私に伝わる。熱を持ったようなそれは私の心を陶酔させ、甘く、切なく、恍惚とさせる。  しばしの静寂。原田は一向に動こうとしない。  顔が熱い。きっと私の顔は茹蛸の様に真っ赤になっているに違いない。  こんなことされるのは初めてだった。なまじ原田の顔がかなり整っているせいもあって、余計にドキドキさせられる。お陰様で私のボルテージは留まることを知らない。  第三者がこの現場を見たら間違いなく誤解するような光景だろう。恋人同士の逢瀬というわけではないが、恥ずかしいものはある。  これこそ彼の言う『彼の評価』に大きく響く行為なのではないだろうか。 「わかりました。先生には私から言っておきますから、ゆっくり休んでくださいね」 「………………」  静かに目を開いた原田は微笑を浮かべ、少し残念そうに子犬ちっくな愛らしい表情でそっと私から離れた。  さっきとは違った意味でドキドキしたが、まぁ変な展開にならなくてよかったと心から安堵する。……ちょっと残念な気がしないでもないが。  さて、正直こんなにも軽く了承が得られるとは思ってもみなかった。  でもせっかくの機会だ。これは僥倖とばかりに私は目を瞑った。  午前中の授業は全て睡眠学習に使用したというのにまだ眠い。  疲れてるのかなー、なんて思う前に私の意識は落ちて行った。
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