第一話 『爽やかな空、穏やかでない一日』

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   ◆ 「今日は寝てばかりだったなぁ」  気が付けば放課後。  直上にあった太陽は地平線の彼方、更にはその色を茜色へと変貌させていた。  刻一刻と空と大地の境界線が太陽を飲み込む瞬間がそこにはあった。  茜色の陽射しを浴びた私は、これで一日が終わるんだなぁと感慨深く自然の摂理に浸る。その影響か今日という一日を振り返ってみると、ひたすら寝てばかりだった自分の姿が出てきた。あまりの無精者っぷりに自己嫌悪したのは言うまでもない。  気持ちを切り替え、生徒会室に用事があったことを思い出し、足をそちらへと向ける。  途中いくつかの教室を横切ったが人の気配は少なく、私の待ち人も教室にはその影も形も存在しなかった。 「ちゃんと書類に目を通してくれたかなぁ、会長」  目的地に到着するまでの私の足取りは重かった。  予算案の資料提出期限は今日。今まで期限を引っ張りに引っ張ってきたのだ。本日中に出さなければお説教を食らうのは目に見えている。  あぁ、どうしようなんて悶えながら、どんな言い訳をしようか考えているうちに気が付けば生徒会室へとたどり着いてしまった。ちなみに考え付いた言い訳数は零だ。  会長どうかいますように! と願いを込めながら取っ手に力を籠め、思い切り扉を開けるが、無情にも朝と同じ光景がそこ(生徒会室)にはあった。  今日何度目かも分らぬ溜息を吐き、朝と同じ様にパイプ椅子を引っ張り出して書類をまとめようとした時、ある変化に気付いた。 「あれ、付箋がしてある……」  朝私が持っていた時にはなかった付箋紙。  そこには赤ペンで「OK!」とという文字と変なニコニコ顔の絵が描かれていた。  会長がこの書類に目を通してくれたのだろう。  ――会長流石ですうぅぅぅ! でも絵心ないんですね。  目的が達成されたことによる喜びと、会長の意外な一面を見れた驚きから先程とは打って変わって足取りは軽く、スキップ混じりで職員室まで向かう。  生徒会顧問の先生に完成した書類を提出してしまえば、これで私はお役御免、晴れて自由の身というわけだ。
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