第一話 『爽やかな空、穏やかでない一日』

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「はい、確かに。ご苦労様でした」  顧問に書類を手渡し、二言三言ほど会話して職員室を出る。  ――あぁ、なぜだろうか。空気が軽い。  清々しい気分に酔った私は最後に大きく伸びをして、仕事の終わりを体で宣言する。  ここ数日はあの書類以外にも文化祭と体育祭の打ち合わせや書類作りなど目まぐるしい日々を送っていた。今日くらいは羽を伸ばしても罰は当たらないもんだと思う。 「あっ! そういえば今日は卵とお肉の特売日だった、こうしちゃいられないっ」  しかし、そんな悠長な事を言っている暇はは私の環境上存在しないようだった。  月に一度の大特価セール。店内どの商品も最低半額というまさに主婦のための特大イベント。  これは今夜の食事内容を左右する重大イベントだ。このミッションが遂行出来なければ夕食はさぞ貧相な絵面になることは間違いないだろう。  気合いを入れて向かうのは近所にある戦場(スーパー)。  扉からは溢れ出んばかりの殺気。少しばかり遅かったようだ。既に事は始まっている。  ならばと私は覚悟を決めて決戦の場への歩を進める。狙うは豚肉とお野菜。惣菜も捨てがたいが、貯蓄も考えると後で手を加えられるものの方が利便性に長けている。  闘志を燃やし、扉を潜った瞬間、私は走り出していた。
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