1人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
◆
冷蔵庫を覗いた私は今日のメニューを思い浮かべながら食材を取り出し、まな板の上へと並べる。
「ピーマンに挽肉、あとはキャベツと……豚肉ね」
包丁を軽く水で濯ぎ、フライパンに油を引いて温める。
まずはピーマンを真っ二つに切り、中身を綺麗に取り出す。挽肉はボウルにある程度の量をあけておき、塩を一摘み入れよく練ったものを水に浸したパン粉と卵と一緒に再度練り込む。練ったものはピーマンの中に詰め、フライパンでよく炒めた後に皿へと並べる。
キャベツはみじん切りにして添えればいい。これで私のおかずは完成だ。
あとは炊きたての御飯をよそって並べれば立派な私の晩御飯である。
「よっしゃ、いっちょ上がり」
こういう一手間が私の健康を支えていると考えると面倒な料理でもちょっとしたやる気がでる。ようは楽しめばいいのだろう。美味しいものが出来上がったときは幸せなのだから。
「頂きまーす」
合唱。
出来上がった肉詰めピーマンに舌鼓を打ちながらテレビのリモコンのスイッチを入れる。アニメやらバラエティやらいくつかの番組をザッピングし、ある番組で私の手は止まった。
『――本日で七件目となったこの事件。行方不明者の数はこれで二十二人となりました。未だに被害者全員の足取りは掴めていません。警察では誘拐事件として捜査を進めていますが、難航しているようです』
”神隠し事件”。事の始まりは三か月ほど前に遡る。とある一家四人が一夜の内に消息不明となったのだ。外部から侵入した者の犯行かと思われたが、争った跡や侵入者の形跡は一切無く、一時は一家心中かとも言われていた。しかし、遺書の類が無く、車は車庫に鎮座していたことから一家心中の線が消え、捜査も難航していた。その事件を皮切りに行方不明者が続出。一家心中が一転、謎の神隠し事件と相成ったわけだ。
最初のコメントを投稿しよう!