仄暗い青空

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これまでに見たことのない親友を見た。 猛然と私を襲ってくる親友の右腕は、鋭利な刃物らしきものを手にし、私を傷付ける事に全くの躊躇も無かった。 これは悪意である。 数時間前には砂漠の砂粒ひとつほど、微塵も感じられなかった悪意である。とはいえ私は友の悪意をこれまで一度も感じようとも思わなかったのだから、私と親友との友情は確固たるものだったと自覚している。 私と親友との間にあるクレバスは、いつ埋まるのだろうか。 親友に殺されそうになっている最中に、友情の修復を願っている私は、なんて友達思いなのだろう。世が世なら、各国が掲げる平和賞は確実に私が独占していたことだろう。 だがこの世は、違う。 平和過ぎて、泣けてくる程である。 金管楽器を従えたパレードの音が近くなってきた。 ちょうど二百年前。 "西暦"が"新暦"になったその日、人類は初めて、真の平和を手に入れた。 今日は世界が平和になって十回目の平和式典で、近くのストリートで大統領が凱旋している。 そういえば、私の手には大統領が乗っている自動車に、"平和"の文字を描いたパネルを打ち付けたトンカチがある。 親友のナイフが目の前を横切った。 私は冷静に、親友の頭をかち割った。
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