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「隠してるって、誰が?お前らがか?」
上司は的外れな事を言いだし、羽城警部が立てた頬杖を崩れ落とさせた。
若い警官は少し呆れ顔で続ける。
「違いますって…。“犯人達”が、ですよ。あれだけの事件です。一人での犯行とは限らないでしょう。監視カメラに映らないのではなく、もしかしたら、監視カメラに映っていた人間全員が犯行を隠しているのかもしれません」
これには僕も驚いた。もし、あのパレードの半数以上がこの事件に関わっていたのだとしたら、ゾッとするものがある。……いや、ありえないけれど。
「そんな馬鹿なことがあるかッ!」
上司は声を荒げるが、その顔には不安の色がありありと見える。
「だっ、大体だな、複数であんな犯行をしたのなら、それなら逆に一人くらいは返り血を浴びたヤツが監視カメラに映っていてもいいだろう!」
「ま、それはそうですけど」
「なら、犯行するグループと隠すグループに分かれているのでは?」
「おいちょっと待てよ…そんなに大人数で計画的な犯行なら、死体の処理くらい出来ただろ。なぜわざわざ現場に死体をそのままにしておいたんだよ」
「……たしかに。やっぱり単独犯か?…ああ、それならまた振り出しに戻った、クソッ!」
これは駄目だ。きっとこの話は今日中は平行線だろう。
僕は羽城警部と一緒に会議室を後にした。
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