第2話

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「久しく来ていなかったからってそんなに驚かないでくれ」 お客さんは無表情から打って変って口角が上がっている。 「誰なんですか?」 僕は一色さんに小声で尋ねた。 「山名さんはここの常連なんだ。とはいっても最近は来てくれなかったけどね」 「仕方ないだろ。仕事が忙しかったのだから」 「ああ、あれね」 一色さんは納得しているようだが、僕にはわからない。 「どんなお仕事をなされているのですか」 結局僕は本人に職業を尋ねた。 「形無いものだけを始末する殺し屋だよ」 形あるものも殺せるけどね、と山名という男は言った。 「えっと……それはいったいどういう意味ですか?」 「言葉通りの意味だよ。人から心の闇まで何でも抹殺できるということだ」 心の闇。 僕の琴線に引っ掛かる言葉だ。 「君の心にも巣食っているように見えるが。深い闇が。私が駆逐しようか?」 僕は迷った。 この男に空白を殺してもらうべきか。 いや、違う。 他人の力を借りてはいけない。 これは他人の介入を受けるべきではない。 「いえ、いいです」 「そうか、気が向いたら声をかけてくれ」 山名さんはお代をテーブルに置いて店を去った。 「あ、そうそう、コーヒー豆の備蓄が底をつきそうなんだ。エリカと赤松君で調達してくれないかな」 「わかりました。じゃあ、行くよ」 コーヒー豆代を一色さんからもらって外へ繰り出した。
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