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「このケーキすごくおいしい! 紅茶もいい香り!」
「そう言ってくれると嬉しいわ」
なんでもケーキはこの女性、新田さんの手作りだそうだ。
紅茶も茶葉や淹れ方にこだわっているという。
「はい、頼まれてたものね」
そう新田さんが言って手渡したのはどこかのお店の紙袋。
その中にはいくつかの缶が入っている。
「豆の銘柄はモカ、ブルーマウンテン、キリマンジェロ、ジャワ、サントス、リロイ」
「リロイって希少種じゃないですか。よく手に入れましたね」
「まあね。世界各地の農園を足繁く通っていたらそういうものも入手できるようになるのよ」
照れくさそうにしている新田さんに代金の入った封筒を渡した。
「エリカ、そろそろ行きますよ」
「えー」
不満そうに頬を膨らませた。
「エリカ、仕事はちゃんとやらないとダメだよ」
新田さんが優しく諭すように言った。
「わかった。じゃあ帰るよ。早く行こ」
さっきまで嫌がっていたのはいったい誰なのやら。
「お邪魔しました」
僕たちは新田邸を後にした。
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