第3話

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****** 僕たちは帰宅後、カウンターに立ってたまに来るお客さんにコーヒー、時々軽食を提供した。 誰もお客さんがいない時、一色さんが何の前触れもなく言った。 「来週の土曜日から3人で旅行に行くよ」 あまりに唐突なので驚きの声が出なかった。 「やったー、旅行だよー、楽しみでドキドキしてきた」 エリカは一色さんの言葉を素直に受け止めて無邪気に喜んでいる。 「旅行といっても隣町の海辺にある小さな小屋のような場所に5日間行くだけだけどね」 「そんなにここを空けておいて大丈夫なんですか?」 「心配することは何もない」 「そうですか……」 なんだか釈然としないまま営業時間終了を迎えた。 夕食と入浴を済ませて自室に戻ると、ベッドに座って『オデッサファイル』を読んでいた。 僕が背負っていた大きなリュックのチャックが開いている。 「フォーサイス好きなの?」 僕は頷いた。 「あの人の本は『ジャッカルの日』しか読んだことないけど結構好き。読んでいてドキドキしちゃうの。主人公と警察の駆け引きが素晴らしかったよ」 「主人公も暗殺の腕が立つだけじゃなくて、礼儀作法が完璧な紳士で、ルックスもいいのも魅力だと僕は思うな」 エリカの頬はわずかに紅潮している。
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