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寝苦しい。
この言葉が頭の中で牛のように反芻を繰り返している。
この部屋にクーラーはおろか、扇風機もない。
ただ窓が開いていて、そこから吹き込むそよ風がカーテンを揺らしているだけだ。
僕は幾度目かの寝返りをうった時、木製の扉が軋む音が聞こえた。
この部屋の扉が開かれた。
僕は部屋に入ってくる人物をはっきりと見た。
エリカだ。
月明かりに照らされながら何も言わずこちらに近づいてくる。
そしてベッドにその身を横たえた。
エリカの存在を背中にひしひしと感じる。
エリカが左腕を僕の体にまわして体をさらに密着させた。
そして耳元で憂いを帯びた儚げな声でこう囁いた。
「お兄ちゃん……」
僕の意識は仄暗い井戸の底に落ちていった。
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