第3話

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****** 気が付くと僕はカウンターに立っていた。 今日も一色さんはいない。 それにエリカもいない。 起こしに行こうかと思ったが、やめた。 どんな顔をして彼女に会えばいいのか僕にはわからない。 昨夜のあの言葉が僕の心に木霊する。 エリカは妹と同じ声音で囁いた。 お兄ちゃん、と。 軽快な鈴の音が鳴った。 お客さんがきたようだ。 木製の椅子を引いて腰かけた。 「カフェラテとトマトレタスサンドを」 山名さんだ。 「かしこまりました」 僕は厨房でパンの耳を切り落とし、トマトとレタスを洗ってから切った。 心に巣食う空白を切り捨てるように。 注文されたものを作り終えると、それらを山名さんの前に置いた。 「ところで、気が変わったか?」 「えっ」 突然山名さんが僕に尋ねた。 「君の中にあるものを始末する件だよ。なあに、子ども相手なんだから値段は良心的だ。その点は安心しろ。ちなみにエリカは客だった」 山名の口から驚きの言葉が飛び出た。 「本当ですか!」 「嘘をつくわけないだろ。信用で商売が成り立ってるんだから」 「失礼しました」 僕は少し頭を下げた。
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